フォーシム(2) 『ゼロかクビか 前進か死か』
タイトルにある通り、この漫画の最大の肝がこの巻から明確になります。
『ゼロかクビか 前進か死か』
36歳のロートル投手が、文字通り崖っぷちの契約でメジャーリーグに殴り込む。
そんな漫画『フォーシーム』の2巻です。
あらすじ
マイナー契約、それも簡単に首を切られる招待選手として海を渡った逢坂猛史。
キャンプが始まり、日本時代とは異なる環境でのベースボールとなるが、強引に己のやり方を貫いていく。
ブルペンでの投球、そしてシートバッティングで逢坂の実力の片りんを一部のコーチやキャッチャーは感じ取るが、年齢の壁、そして衰えた球速の壁はあまりに高くそれがGMや監督に評価されることはない。
だが、逢坂の高い制球力を高く評価した投手コーチがGMにひとつの提案をする。
『開幕までの紅白戦、オープン戦、その全てを無失点で切り抜けたならどうだろう?』
そして始まる紅白戦。逢坂のゼロか死を賭けた戦いがここから始まる。
雑感
この巻から逢坂猛史の『制球力』が強くピックアップされるようになります。
日本式の練習・調整法。いわゆる走り込みによる下半身作り、そしてアメリカ式より多い投げ込みによって培われた制球力が光るようになります。
現実にその調整法が良い悪いというのは別にして、この漫画はベテラン投手の崖っぷち奮闘記とその頑固さが売りみたいなところがあります。
アメリカ式を強いられる中で、自分の時間を削ってでもこれまで長年培ってきた己の調整法を貫く頑固さ。それがこの2巻からは少しずつ表に出てきます。
そして、漫画のタイトルでもある『フォーシーム』という球種が明示こそされませんが表現の中で特徴として表れ始めるのもここからです。
ツーシーム。いわゆる150キロ超の動く速球の全盛でもあるメジャーに置いて、90マイルちょっと、143キロ前後の動かない綺麗な速球で対抗する。
これ、野球に少し詳しい人だったらどこかで聞いたことあるような・・・と思うかもしれません。そうです。メジャーリーガー上原浩治です。
もしかしたら、上原をどこかモチーフにしている部分もあるんじゃないかな、と思いながら僕は読んでいます。
フォーシームは動かない、つまり沈まない速球です。素直な分打ちやすいとも言われていますが、その定説通りにいかないよというのが上原であり、この逢坂なのです。
高い制球力でファールを打たせる。球速以上に速く見えるフォーシームを高めに放り空振りを奪う。少しずつ投手逢坂の魅力が垣間見えてくるのが面白いです。
そして逢坂だけでなく、彼を取り巻くチームメイトの反応の変遷もこの作品のひとつの魅力かもしれません。
ロートルの第二捕手。ルーキーの正捕手。その対となる反応も併せて、逢坂の投球を楽しむことのできる第2巻。是非とも手に取って読んでみてもらいたいと思います。